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社外取締役の就任要件とは?選任方法や自社にふさわしい人材の探し方

社内の人材を昇格させる一般的な取締役とは異なり、社外の人材を招く「社外取締役」。

アメリカの企業では設置が当然のこととされており、日本においても2021年の会社法改正により一部の企業については設置が義務化されました。

この記事では、社外取締役の選任要件について解説します。社外取締役を探す方法についても紹介しますので、エグゼクティブ人材の採用を担当されている方は参考にしてください。

社外取締役の主な役割

社外取締役の主な役割は以下の4点です。

  • 取締役会への参加
  • コーポレートガバナンスの強化
  • 株主と経営陣のつなぎ役
  • 客観的な視点からの経営面の監督・助言

それぞれの役割について詳細に解説します。

取締役会への参加

上場企業は取締役会の設置を義務付けられています。社外取締役は、社内取締役、監査役(監査役会・監査等委員会)などの執行役員とともに、取締役会に参加しなければなりません。一般的に取締役会は1~3カ月に1回の頻度で実施されます。

取締役会で社外取締役に期待されるのは、外部の取締役としての立場や視点からの気づきの発信です。会社の利害関係にとらわれない発言が求められます。自社とは違う業界から招かれた社外取締役であれば、専門的な知識や経営経験にもとづいたアドバイスも期待されるでしょう。

コーポレートガバナンスの強化

コーポレートガバナンスの強化に努めることも、社外取締役の代表的な役割です。

企業は時として倫理やルールを無視して利益の獲得に走ることがあります。上場会社であっても例外ではありません。実際に、近年は大企業が会社ぐるみで不正を働いた事実が発覚し、廃業に至るケースが相次いでいます。

コーポレートガバナンスとは、従業員・取引先・株主などステークホルダー全体の立場から見て公正な意思決定を行い、倫理的な企業活動を維持する取り組みのことです。ガイドラインとして、「コーポレートガバナンス・コード」が制定されています。社外取締役には、公正な立場から、このコーポレートガバナンス・コードの遵守に取り組んでいく姿勢が求められます。

株主と経営陣のつなぎ役

社外取締役は、株主と経営陣の間で意思疎通を促す役割も担っています。

株式会社の企業経営には株主の力が不可欠です。しかし、実際には株主の声が届かず、経営陣と株主の間に軋轢が生じてしまうケースが少なくありません。継続的に支援してもらうためには、株主たちの意見を経営に適宜反映させる必要があります。

社外取締役は、株主と経営陣のつなぎ役となり、株主の意見を代弁して経営陣に伝えなければなりません。社外の人間だからこそ、株主の立場を理解したうえでの発言が期待されるでしょう。

客観的な視点からの経営面の監督・助言

社外取締役には、経営陣に対して客観的な助言を行う機能が求められています。

社内の経営陣だけで判断を行っていると、無謀な事業戦略に手を出してしまうことがあります。一方、反対に消極的な戦略しか打ち出せず、機会損失するケースも少なくないでしょう。現実的かつ成長につながるバランスの良い戦略を打ち出すためには、冷静な意見が必要です。

社外取締役は、企業の経営が適切かどうか常に監視しなければなりません。

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社外取締役の就任要件

社外取締役の就任要件は、会社法第2条15号に定められています。以下では、社外取締役の就任要件について解説します。

社外取締役の就任要件

原則として、社外取締役は当該会社やグループ会社に利害関係のない人物を選ぶことが求められます。これは、利益相反取引の発生を回避するためです。会社法上では、社外取締役を含めすべての取締役を対象として、利益相反取引を実施しようとする際には取締役会で承認を得る必要があることが定められています。

社外取締役に第三者的な役割が求められることも理由のひとつです。自社に利害関係がない人物だからこそ、奇譚のない意見が期待できます。専門性の高い新たな分野の知見を得たい場合も、第三者の視点が求められます。

以下に紹介する社外取締役の具体的な要件も、こうした考え方がベースになっています。

関連会社から社外取締役を選ぶ際の要件

会社法第2条15号では、社外取締役として以下のような要素が定められています。

所属先社外取締役の就任要件
親会社・取締役若しくは執行役若しくは支配人その他の使用人でない
・配偶者又は二親等内の親族でない
兄弟会社・業務執行取締役等でない
当該会社・業務執行取締役、執行役、支配人、使用人でなく、かつ就任の前十年間当該株式会社の業務執行取締役等であったことがない
・会計参与(会計参与が法人である時は、その職務を行うべき社員)又は監査役であったことがある者(業務執行取締役等であったことがあるものを除く。)にあっては、当該取締役、会計参与又は監査役への就任前十年間当該株式会社の業務執行取締役等であったことがない
・取締役若しくは執行役若しくは支配人その他の重要な使用人の配偶者又は二親等内の親族でない
子会社・業務執行取締役、執行役、支配人、使用人でなく、かつ就任の前10年間その子会社の業務執行取締役等であったことがない
・会計参与(会計参与が法人である時は、その職務を行うべき社員)又は監査役であったことがある者(業務執行取締役等であったことがあるものを除く。)にあっては、当該取締役、会計参与又は監査役への就任前十年間その子会社の業務執行取締役等であったことがない
・取締役若しくは執行役若しくは支配人その他の重要な使用人の配偶者又は二親等内の親族でない

平成26年の改正会社法により、親会社、子会社、兄弟会社に関する定義が追加されました。なお、年齢・性別・学歴などの要件はありません。

【出典】「社外取締役及び社外監査役の要件等の改正について」 (法務局)

社外取締役の選任方法

社外取締役は、社内の取締役と同じように株主総会において決議のうえで選任する必要があります。定時株主総会ではなく、臨時株主総会を開催して決めるケースが一般的です。

選任後、会社と当該取締役との間で委任契約を締結します。続いて、取締役就任の登記を行います。基本的には「取締役」として登記すれば問題ありません。ただし、社外取締役である旨の登記も必要なケースがあります。

社外取締役である旨の登記が求められるのは以下のような場合です。

  • 特別取締役による議決の定めがある場合の社外取締役
  • 指名委員会等設置会社の社外取締役
  • 監査等委員会設置会社の社外取締役

「特別取締役」とは、財産売却・借金など重要な案件の議決をスピーディーにとるための取締役です。決議された内容は、取締役会の決議と同等の効力を有します。

「指名委員会」とは、経営陣の選任・解任について議論するための組織です。過半数を社外取締役で構成します。

「監査等委員会」は、取締役の業務執行の妥当性を評価する組織です。通常の監査役と違い、取締役会での議決権を有しています。

これらに該当する会社の社外取締役は、登記簿の役員欄に「社外取締役」として記載しなければなりません。

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社外取締役の候補の探し方

一般的に社外取締役の候補となるのは、以下のような人材です。

  • 企業出身の経営人材
  • 弁護士
  • 公認会計士
  • 税理士
  • 学者

社外取締役には、過去の職歴は問われません。そのため、さまざまな背景を持つ人材が候補となります。以下では、社外取締役候補の代表的な探し方を紹介します。

弁護士会の社外役員候補者名簿を利用する

社外取締役候補として弁護士を検討している場合、社外役員候補者名簿を活用する方法があります。

多くの弁護士会では、社外役員の候補となる弁護士の名簿を企業向けに提供しています。得意分野を絞り込んで検索することも可能です。コーポレートガバナンス強化を実現したい場合は、企業コンプライアンス案件の対応歴がある弁護士が適しているでしょう。

ただし、地域によっては弁護士会が名簿を提供していない場合があります。そのため、地域によっては選択できない方法です。また、マッチングのサービス体制は十分ではありません。適切な人材を見つけるためには、自社の採用力が求められます。

社外役員候補公認会計士紹介制度を利用する

公認会計士を社外取締役として登用したい場合は、社外役員候補公認会計士紹介制度を利用する方法があります。社外役員候補公認会計士紹介制度は日本公認会計士協会が提供している制度で、ウェブサイトから条件指定して公認会計士を検索可能です。

会員数は2023年末の時点で3000人に到達しています。社外取締役の職務に強い関心がある会計士から候補者を見つけられるのは大きな魅力です。会計専門家を取締役として招くことで、財務の透明性を確保することにもつながります。

ただし、マッチングのサポートは手薄であり、慎重に候補者を選ばなければミスマッチが生じることがあります。

監査法人などから紹介を受ける

提携している監査法人があれば、監査法人に候補者の紹介を依頼するのもひとつの方法です。日頃から、監査法人とコミュニケーションをとっていれば、社外取締役探しに協力してくれるかもしれません。求める要素などを伝えれば、ネットワークの範囲で該当する人材を見つけてきてくれるでしょう。

一方、監査法人は人材紹介やマッチングを行っているわけではないため、手厚いサポートなどは期待できません。優秀な人材を迎えられるかどうかは、あくまで自社の採用力と交渉力にかかっています。

ビジネスコミュニティに参加する

ビジネスコミュニティに参加して社外取締役を探すことも一般的です。ビジネスコミュニティとは、ビジネス・事業を共通項として人が集まり、交流する場のこと。民間企業や公益団体が多数のビジネスコミュニティを主催しています。

社外取締役に限らず、さまざまな人材とコミュニケーションできる点が魅力です。また転職市場に出ていない優秀な人材が見つかるかもしれません。他の参加者も現状に満足せず新たなビジネスチャンスを求めている人が多いため、意欲的な人材との接点を持てるでしょう。

サービスの内容は、参加するビジネスコミュニティによって異なります。交流会に近いものから、採用のコンサルティングサービスを提供しているものまでさまざまです。まずは、自社の目的にあったビジネスコミュニティを見つけ、参加する必要があります。

社外取締役マッチングサイトを利用する

近年は、社外取締役マッチングサイトを利用することも一般的になってきています。社外取締役マッチングサイトとは、転職エージェントや人材紹介会社などが提供している社外取締役の紹介に特化したサービスです。登録者と企業のコミュニケーションを仲介するサイトや、エージェントが間に入りコミュニケーションをサポートるサイトがあります。

候補者とダイレクトにコミュニケーションできるため、スピーディーにマッチングできる点が魅力です。また、マッチングのタイミングを制御しやすく、自社の体制を構築してから社外取締役を迎え入れることができます。希望する年間の役員報酬など、条件で検索しやすい点もメリットです。

サポート内容はサイトによって異なるため、事前に確認しておく必要があります。特に、エージェントサービスがない場合はミスマッチが生じやすいため注意が必要です。

転職エージェントを利用する

転職エージェントを利用して社外取締役を探すこともできます。一般的には正社員の採用で利用されるサービスですが、エグゼクティブ人材を紹介しているエージェントも少なくありません。

多くの人材が登録しているため、選択肢が豊富な点はメリットといえるでしょう。エージェントの手腕次第で、優秀な人材の獲得が期待できます。

一方で、上記の方法と比較すると相対的なコストの高さはデメリットといえます。また、マッチングサービスの質はエージェントによって異なるため、ミスマッチを防ぐためにはエージェントを慎重に選ばなければなりません。

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社外取締役の要件を把握して優秀な候補者を見つけましょう

社外取締役を採用するうえで、要件に該当する人材を選ぶことは前提です。会社法改正により、要件は少し複雑になりました。まずは要件を把握したうえで、自社に求められる人材にアプローチしていくことをおすすめします。

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この記事の監修

野尻 剛二郎

Nojiri Kojiro

【専門領域】アセットマネジメント/グローバルマーケッツ/法務コンプライアンス


【経歴】日興証券、リーマンブラザーズ、モルガン・スタンレーにて機関投資家向け日本株式営業および営業ヘッドを務める。その後、外資系大手ラッセル・レイノルズのシニアコンサルタントとしてエグゼクティブサーチのキャリアをスタート、20年のサーチ経験をもつ。英語堪能。南カリフォルニア大学にてMBA取得。

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