ネット上で証券取引ができるようになり、トレーダーという仕事が広く知られるようになりました。トレーダーの業務内容とやりがいのほか、キャリアパスなどについて説明します。
ネット上で証券取引ができるようになり、個人レベルで取引を行うデイトレーダーが注目されたことで、トレーダーという仕事が一般に広く知られるようになりました。しかし、具体的な仕事の内容については「よくわからない」という人も多いようです。
そこで今回は、トレーダーの業務内容や仕事のやりがいのほか、キャリアパスなどについてご説明します。
<目次>
1.トレーダーとは、金融機関に所属して証券の売買を仲介する職種のこと
2.トレーダーとディーラーの違い
3.デイトレーダーは、トレーダーとは似て非なるもの
4.トレーダーの仕事内容
5.トレーダーの種類
6.トレーダーのやりがいとは?
7.トレーダーに向いている人の特性
8.トレーダーのキャリアパス
1.トレーダーとは、金融機関に所属して証券の売買を仲介する職種のこと
トレーダーとは、証券会社や投資銀行などの金融機関に所属し、債券や株式などの証券の売買を仲介する職種です。顧客である投資家からの依頼を受けて、その注文内容をディーラーに伝える中継役を担う仕事ですが、場合によっては自分自身で取引を行うことも。また、金融関連の情報を収集して選別し、顧客に提供して取引を促す役割もあります。
顧客にとっては情報やアドバイスをくれる存在であり、ディーラーにとっては顧客からの注文を整理してまとめてくれるパートナーのような存在であるのが、トレーダーという職種であるといえるでしょう。
2.トレーダーとディーラーの違い
トレーダーとディーラーという2つの職種について、「業務の大枠は同じなのでは?」と思う人も少なくないでしょう。この2つの職種は、どのような違いがあるのでしょうか。一般には、あまり厳密に区別されておらず、金融機関においては同じ意味で使われる場合もあります。ですが本来、トレーダーとディーラーには、明確な違いがあります。
トレーダーとは、顧客の依頼やファンドマネージャーの指示をとりまとめ、それをディーラーに伝える役回りのことを指します。つまり、基本的に自分の意思や自社の資金で取引するわけではありません。
一方のディーラーは、顧客からの依頼に加えて、自身の判断と自社の資金を使って取引を行います。これが、両者の大きな違いです。
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3.デイトレーダーは、トレーダーとは似て非なるもの
ネット証券が登場し、個人でも手軽に証券取引ができるようになったことから、デイトレーダーという言葉も広く普及しました。
トレーダーと混同されがちなデイトレーダーですが、デイトレーダーは一般的に、「一日に何度も取引を行い、利益を重ねる個人投資家」のことを指します。前述したとおり、トレーダーは自分の意思や自社の資金での取引は行わない職種であることから、デイトレーダーはトレーダーとは似て非なる職種であるといえます。
4.トレーダーの仕事内容
顧客とディーラーのあいだに立って、顧客からの依頼をとりまとめ、ディーラーにパスする。これが、トレーダーの主な業務です。こうすることで、ディーラーは取引に集中でき、タイミングを見計らった瞬時の判断で、大きな利益を狙うことができます。
また、情報収集もトレーダーの重要な仕事です。世界中の金融市場が複雑に関係し合う現代において、金融取引で利益を得るには、判断力もさることながら、的確な判断を下すための情報を収集する力が欠かせません。証券や為替の値動きはもちろん、市場に影響を与えるさまざまな情報をいち早く集め、取捨選択して顧客に提供する。これも、トレーダーの大切な役割です。
5.トレーダーの種類
一口にトレーダーといっても、細かく見ていくと「セルサイド」と「バイサイド」に分けることができます。それぞれ立ち位置が異なるため、実際の業務内容にも違いがあります。具体的にどのような違いがあるのか、見ていきましょう。
セルサイドのトレーダーの役割
セルサイドのトレーダーの仕事は、証券会社に所属し、個人や法人の投資家から依頼を受けて、それを自社のディーラーにパスすることです。外部の顧客に対して各種金融商品を売り、投資家の利益に貢献する役割を担います。
バイサイドのトレーダーの役割
バイサイドのトレーダーの仕事は、自社のファンドマネージャーからの依頼を受けて、それをディーラーに伝えることです。自社の判断と資金を使って取引を発注し、自社の利益に貢献する役割を負います。
6.トレーダーのやりがいとは?
トレーダーという職種のやりがいには、どのようなものがあるのでしょうか。ここでは、トレーダーの4つのやりがいについて、詳しくご説明します。
①個人では体験できない大きな取引に関わることができる
個人では手掛けることのできないような巨額の取引に関われるという点は、トレーダーのやりがいのひとつです。数億円あるいはそれ以上の取引がうまくいき、莫大な利益が得られれば、その達成感は大きなやりがいとなるでしょう。
常に動き続ける金融市場というフィールドは、それ自体が魅力的な舞台です。そこに身を置いて仕事をすることで、ダイナミックに変化していく経済の力強さを間近で感じることもできます。これは、トレーダーのみならず、ディーラーにも共通する魅力といえます。
②実績が自分の収益に直結する
トレーダーは実力の世界です。取引で利益を上げるためには、学歴も年功序列も役に立ちません。その代わり、確かな実績を積み重ねて自社や顧客に大きな利益を提供できれば周りからの評価は高まり、結果的に大きな年収アップにつながります。
その反面、いくらがんばったからといって、十分な実績を上げられなければ、決して高い評価は得られません。成果を出してこそ自分の収益につながるという、厳しい世界でもあります。
③チームプレーの醍醐味を味わえる
ディーラーの場合、金融取引の最前線で瞬時の判断を繰り返し、取引を重ねて利益を追求します。そのため、仕事そのものが個人プレーの性質を持っています。
一方、トレーダーはそうではありません。ディーラーと顧客、自社のファンドマネージャーなど、さまざまなポジションの人たちとの関わりを持つことによって、初めて成立するのがトレーダーの仕事です。そのため、顧客やファンドマネージャーとの共同作業で大きな利益をつかんだときは、仕事の喜びを味わうことができます。こうしたチームプレーの楽しさも、トレーダーの醍醐味といえるでしょう。
④厳しい環境の中で、自分の実力を試すことができる
トレーダーが身を置くのは、実力勝負の世界です。一つひとつの取引に成功し、それを積み上げて自分の実績を作らなくてはなりません。そのためトレーダーは、常に各方面にアンテナを張り、株と為替の動きや国際政治の動向などにも目を配ります。顧客に情報提供やアドバイスを行い、ファンドマネージャーとのディスカッションを密にして、顧客と自社に利益を提供することを第一とします。
もちろん、市場は生き物ですから、予想外のアクシデントも起こります。ですが、「仕方なかった」が通用しないのが、トレーダーという仕事です。
実に厳しい環境ですが、その中で成果を上げることができれば、それは大きな喜びとなるでしょう。仕事の厳しさもまた、トレーダーのやりがいのひとつなのです。
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7.トレーダーに向いている人の特性
トレーダーという職種は、どのような人に向いているのでしょうか。
続いては、トレーダーに向いている人が持つ5つの特性についてご説明します。
①情報の収集や分析に強い
顧客とディーラーをつなぐのがトレーダーの仕事です。とはいえ、トレーダーは単なる連絡係ではありません。自主的に情報を集めて分析し、その結果を踏まえて顧客や自社のファンドマネージャーに助言を与えることも、重要な役割です。その情報収集と分析は、決して簡単な作業ではありません。
ネット経由で膨大な情報が得られる現代では、取捨選択の見極めができなければ、かえって情報に溺れることになります。また、正確かつ精密な分析を行わないと、アドバイスのつもりがミスリードにもなりかねません。さらに、この作業は途切れることなく、常に継続する必要があります。
こうした作業を地道に続けられる人が、トレーダー向きの人材といえるでしょう。
②情報処理能力が高い
前項とも関連しますが、情報処理能力の高さは、トレーダーに求められる適性のひとつです。情報収集力や分析力もトレーダーに不可欠な要素ですが、その作業に時間をかけすぎてしまっては、せっかくの情報や分析結果も意味をなしません。秒単位で動いている金融市場に対して、「ちょっと待って」は通用しないのです。
そのため、集めた情報を正確に分析することに加え、スピードも重要といえるでしょう。情報処理能力が高いほど市場の動きを捉えることができ、タイミングを逃すことなく的確な判断ができるのです。
③コミュニケーション能力が高い
トレーダーは、決して一人で仕事をしているわけではありません。顧客への情報提供やアドバイス、ファンドマネージャーとのディスカッションなど、多くの人とのコミュニケーションの中で進めていく仕事です。ですから、十分なコミュニケーション能力が必要となります。
特に顧客と話す場合には、細やかな配慮が大切です。市場全体の動きや個別の銘柄の説明などの際には、どうしても専門用語を使いがちになってしまいます。ですが、取引先から誤解をされたり説明不足であることがないようにするためには、極力わかりやすい言葉を使ったり、丁寧な会話術が必要になったりするのです。
こうしたスキルは、すぐに身につくものではありません。そのため、常に努力を続ける姿勢もまた、トレーダーにとって大切な資質であるといえます。
④精神的にタフである
トレーダーはディーラーと同じく、自社や顧客から巨額の資金を預かり、それを運用して利益を上げるという重責を負っています。取引を成功させるためには瞬時の判断が必要ですが、そこには大きなリスクと背中合わせであるというプレッシャーもあります。取引に失敗して損失を出したときのことを考えてしまっては体がすくんでしまい、とても取引どころではないでしょう。
こうした強度のストレスに耐えながら大胆な取引を重ねていくには、強靱な精神力が欠かせません。プレッシャーをエネルギーに転換できるほどのタフさは、トレーダーにとってとても重要な資質であるといえます。
⑤客観的な判断ができる
大きなプレッシャーの中で巨額の取引を矢継ぎ早に行うのは、実に過酷なことです。しかし、そのストレスにのまれて冷静さをなくしてしまうようでは、トレーダー失格です。どのような状況にあっても冷静に、かつ客観的な判断を下すことができて、初めて目まぐるしく動く金融市場において、トレーダーとしての実績を積むことができるのです。
そのため、常日頃からあらゆる事態を想定し、対応策を用意しておくことが必要です。また、たとえ予想外の出来事に遭遇しても、冷静かつ客観的に対処しなければなりません。それができる人ならば、トレーダーとして有望な人材といえます。
8.トレーダーへの転職を有利にする資格とは?
何らかの資格を取っておくことで、トレーダーへの転職が有利に働く場合があります。中でも、「証券外務員資格」と「証券アナリスト資格」を持っていれば、転職時にプラスになるでしょう。これら2つの資格について、詳しくご説明します。
①日本証券業協会が認定する公的資格「証券外務員資格」
証券外務員資格は、銀行や証券会社などで預金も含めた金融商品を扱う場合において、不可欠の資格です。反対にこの資格がないと、トレーダー業務を行うことができません。
新卒採用の場合は、一定期間内での取得が会社から義務付けられますが、中途採用の場合はこの資格の取得者であることが応募条件とされることも多いです。そのため、トレーダーを目指すなら、できるだけ早期の取得を目指すといいでしょう。
なお、証券外務員資格にはいくつかの種類があり、一般的には一種外務員資格あるいは二種外務員資格のいずれかを選ぶことになります。二種外務員資格に比べて一種外務員資格はより多くの種類の金融商品を扱うことができますが、それだけに試験で問われる金融商品の出題範囲が広く、資格試験の難度も高いです。そのため、どちらを目指すべきか、あらかじめ検討しておく必要があります。
②日本証券アナリスト協会が主催する「証券アナリスト資格」
証券アナリスト資格は、通称「CMA資格」とも呼ばれる、金融のプロフェッショナルであることの証となる資格です。証券外務員資格とは違い、金融機関に勤務するからといって取得が必須というわけではありません。しかし、この資格を得るためには、金融に関して幅広い、かつ十分以上の専門知識が必要です。そのため、あらかじめ取得しておくと、新規・中途を問わず、就職に有利に働くでしょう。
資格取得のハードルは決して低くはありませんが、日本証券アナリスト協会では、受験のための講座を開催しています。金融のプロを目指すなら、受講・受験を検討してみてはいかがでしょうか。
9.トレーダーのキャリアパス
トレーダーは専門職ですから、経験を積むほどに専門的なスキルが高まります。市場の動きに敏感で金融商品についての知識も豊富、しかも情報収集能力や分析能力にも長けているという存在こそがトレーダーです。そのため、十分な実力があれば、日本企業での経験を活かして外資系に転職するという道が開けるでしょう。あるいは、ヘッドハンティングを受けて他企業に移籍するということもよくあります。
まったく畑違いの業界へということはまれですが、ファンドマネージャーへの転身や専業トレーダーとして独立するという道もあります。コミュニケーション能力が高く、営業スキルがあるなら、金融機関の営業職というポジションも有望でしょう。
専門職であるがゆえに「つぶしがきかない」と思われがちですが、トレーダーのキャリアパスは、意外なほどに多く用意されているのです。
トレーダーへの転職・採用はタイグロン パートナーズへ
トレーダーは華やかなイメージで語られがちかもしれませんが、実際は実力社会の厳しい世界です。それだけにやりがいがあり、自分の力と可能性を試すには、絶好の舞台かもしれません。
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