SAPコンサルとは?仕事内容と人材需要が高い理由、転職で求められるスキル
1.SAPコンサルタントとは?
まず初めに、SAPコンサルの特徴や仕事内容など、職種の基礎知識を解説します。中途採用でコンサルティング業界を目指す方は、SAPコンサルという職種について基本から確認してみましょう。<SAPコンサルについて>
SAPコンサルは、ERPシステムを導入・運用するクライアント企業のサポートを担う専門家です。コンサルティング会社やシステムインテグレーター企業(=情報システムの構築や運用を担うSIerと呼ばれる企業)などに所属し、SAPの導入・運用に関するコンサルティングサービスを提供します。<SAPコンサルの仕事内容>
SAPコンサルは、クライアント企業の経営課題や業務課題を解決するために、SAPシステムを活用したソリューションを提案します。その際は、SAPシステムの専門知識や技術を活かしてクライアント企業に必要なサービスを選定するとともに、導入支援を実施します。また、システム導入のフェーズに限らず、導入後のアフターフォローもSAPコンサルの仕事内容の一つです。運用サポートのほか、システムの不具合対応といった運用保守に関わる場合もあります。<SAPコンサルタントとSAPエンジニアの違い>
SAPコンサルとよく似た職種として「SAPエンジニア」が挙げられます。SAPコンサルとSAPエンジニアの主な違いは、担当する業務範囲です。SAPコンサルは、システム導入を検討する段階から支援を担い、業務改善提案・要件定義・プロジェクト管理稼働後のフォローアップといった領域を担います。それに対して、SAPエンジニアはシステム設計・開発テスト・モジュールの開発・アドオン開発などの領域を担う点に違いがあります。2.SAPコンサルタントの需要が高い理由
コンサルティング業界ではSAPコンサルの需要が高く、活躍の機会が非常に多いです。ここでは、SAPコンサルの需要が高い理由や背景をご紹介します。● 企業のDX化が加速しているから
近年のビジネス環境ではデジタル化のニーズがますます高まり、多数の企業がERPシステムの導入や自社の古いシステムの更新を検討しています。もともとシェアが高く世界中の企業で導入実績があるSAPシステムは、グローバル展開を目指す大企業を中心に依然として需要が高い状況が続いています。● SAPのシステムは専門性が高いから
SAPシステムの導入・運用を支援するには、高度な専門知識や技術が必須です。具体的には、プログラミング・システム統合・データ移行・セキュリティ対策などに対応できる技術力が求められます。 また、「SAPモジュール」と呼ばれる、財務会計(FI)や管理会計(CO)、販売管理(SD)、購買管理(MM)、生産管理(PP)、人事管理(HR)など、企業内の各業務領域をカバーする機能群があり、モジュールごとに専門的な知識を求められます。 SAPコンサルはこうした技術力・専門性の高さから市場価値が高く、今後も引き続き多くの企業で活躍が期待されている職種です。● 2027年(2025年)問題の影響があるから
SAP社の「SAP ERP 6.0」や「SAP Business Suite」など一部製品は、2027年にサポート終了予定となっています(※2025年から期限が延長され2027年となりました)。そのため、現在は後継製品である「S/4HANA」への移行が推奨されている状況です。こうした背景から、システムの移行を検討する企業が多く、SAPコンサルによる支援が必要とされています。● 慢性的にIT人材が不足しているから
日本国内はIT人材不足が年々深刻化しています。社会でIT活用が進み、IT人材の需要が増加しているにもかかわらず、供給が間に合わずギャップが拡大している状況です。SAPコンサルは希少価値の高いIT職種の1つであることから、採用市場で人気が高く仕事の単価も高い傾向にあります。3.SAPコンサルタントに求められるスキル
クライアント企業にコンサルティングサービスを提供するには、高度な専門知識や技術が必要です。今後、SAPコンサルへの転職を検討するなら、以下のスキルの習得を目指しましょう。①SAPに関する専門知識
SAP社が提供するERPパッケージは、業務別に多彩なSAPモジュールとして多様な機能が提供されています。SAPコンサルは各モジュールの機能や仕組みを理解し、適切にカスタマイズして利用することにより、クライアント企業の課題を解決へ導く役割を担います。そのためにも、後述する「SAP認定コンサルタント資格」などの専門知識を証明する資格の取得が求められます。②IT技術の基礎知識
SAPコンサルとして活躍するには、基本的なITの知識とスキルが不可欠です。エンジニアとして培ったシステム設計・開発の経験を活かして、SAPコンサルへのキャリアアップ転職を検討しても良いでしょう。IT業界での実務経験や知見をコンサルティング業務に役立てられます。③プロジェクト管理能力
SAPコンサルには、プロジェクトの進行状況を管理し、スケジュールやリソースを調整する管理能力が求められます。特にSAPシステムの導入は大規模なプロジェクトとなるケースが少なくありません。進捗管理や予実管理を徹底し、プロジェクトを成功へ導くことが大切です。④コミュニケーション能力
SAPコンサルはクライアント企業の要望や問題を的確に把握するとともに、分かりやすく説明するコミュニケーション能力が欠かせません。また、大規模なプロジェクトでは他のコンサルやエンジニアと協力する場面が多いので、チーム内の円滑な連携のためにもコミュニケーション能力が求められます。⑤問題解決能力
SAPシステムの導入・運用では、予期せぬ問題が発生する場合があり、そのような時にSAPコンサルは速やかに問題解決へと導きます。クライアント企業の業務フローやシステム運用の理解を前提に、問題点を発見・特定し、解決策を実行する知識・スキル・経験を有している必要があります。4.SAPコンサルタントに転職するには
キャリアチェンジしてSAPコンサルを目指すなら、転職活動へ向けて以下の準備をすると良いでしょう。キャリアアップ転職を実現するために、ぜひ以下のポイントを参考にしてみてください。◇SAPの知識・経験を身につけてから転職活動を行う◇
*SAP社が提供するトレーニングを受ける
SAPシステムに関するスキルを高めたい場合は、SAP社が提供するトレーニングの受講が有効です。SAP社では学習リソースを提供しており、「SAP Learning Hub」でのライブセッションや実践演習などを実施しています。これらの研修を受けるだけでなく、市販の書籍により、SAPシステムに関する知識・ノウハウを学ぶのも一つの方法です。*実務経験を積む
SAPシステム未経験の場合は、まずSAPシステムの導入プロジェクトへ積極的に参画して実務経験を積む必要があります。まずはSAPプロジェクトに参加し、実務を通じてSAPコンサルの働き方を学んでいきましょう。SAPコンサルを目指すなら、キャリアパスを意識して実務経験を積める機会を探してみてください。*SAP認定コンサルタント資格を取得する
SAPコンサルとしての信頼性を高めるためにも、「SAP認定コンサルタント資格」の取得が推奨されます。こちらはSAP社が公式に認定する資格制度です。SAPシステムの知識と技術の習得を証明できるため、目的に合わせて分野やレベルを選択し、取得を目指すと良いでしょう。SAP認定コンサルタント資格は、以下の分野およびレベルに大きく分かれています。 【SAP認定資格の分野】 ・アプリケーションコンサルタント:SAP導入の提案や支援を担うコンサル向けの認定資格 ・デベロップメントコンサルタント:SAPのアプリケーションを開発するプログラマー・システムエンジニア向けの認定資格 ・テクノロジーコンサルタント:SAPのシステム管理に携わるインフラエンジニア向けの認定資格 【SAP認定資格のレベル】 ・アソシエイト:SAPの基礎的な知識やスキルを証明する中級者レベルの認定資格 ・スペシャリスト:SAPの基礎に加えて各モジュールの知識やスキルを証明する中級者レベルの認定資格 ・プロフェッショナル:SAPの実務やプロジェクト経験など高度な知識やスキルを証明する上級者レベルの認定資格【参考】Certification Validities(SAP社)