現代は変化が激しく、将来を予測できない時代です。こうした不安定な状況において、需要が高まっているのがコンサルタントです。現在はコンサルタントではない方の中にも、ネクストキャリアとしてコンサルタントへの転職を考えている方もいることでしょう。一方で、コンサルタントの仕事が具体的にイメージしにくいと感じている方もいるかもしれません。コンサルタントと一口にいってもさまざまな種類があり、求められるスキルや経験も異なります。
ここでは、コンサルタントの仕事についてご説明するとともに、仕事のやりがいや大変なこと、転職してコンサルタントを目指す際に求められるスキルなどについても解説します。
コンサルタントの仕事は企業の課題解決をすること
コンサルタントの仕事は多岐にわたり、一言で表せるものではありません。ですが、あえて定義するなら、「企業の課題解決をすること」がコンサルタントの仕事といえます。
単純に課題といっても、経営や人事、財務、デジタルツールの導入など、クライアントによって課題を抱えている領域はまちまちです。さらに、同じ領域であっても、業種によって課題の中身や解決方法はまったく異なります。
コンサルタントの仕事とは、こうしたクライアントの課題を高い専門性と提案によって解決に導くことなのです。
コンサルティングファームの種類
企業が抱えるさまざまな課題に対して、1人のコンサルタントがすべてを解決できるわけではありません。コンサルタントはそれぞれ専門領域を持っており、得意分野で力を発揮します。
どのような領域を得意とするコンサルタントが多く所属しているかによって、企業が依頼すべきコンサルティングファームは異なります。では具体的に、コンサルティングファームにはどのような種類があるのでしょうか。それぞれ解説していきます。
戦略コンサルティングファーム
戦略コンサルティングファームは主に、企業の経営層に対してコンサルティングを行います。具体的には経営戦略やM&A戦略などが担当領域です。企業の業績や経営計画に影響を与えることから、コンサルタントには相応の経験や知識が求められ、その分コンサルティングフィーも高額になることも多い領域といえます。
<代表的なコンサルティングファーム>
・マッキンゼー・アンド・カンパニー
・ボストン コンサルティング グループ
・A.T. カーニー
・ベイン・アンド・カンパニー
・アーサー・D・リトル
・ローランド・ベルガー
・アクセンチュア(戦略グループ)
・PWCコンサルティング(Strategy&)
・モニターデロイト(デロイト戦略グループ)
・経営共創基盤
・ドリームインキュベータ
・コーポレイト ディレクション
総合コンサルティングファーム
総合コンサルティングファームは、業界を問わず、さまざまな領域の課題について総合的にコンサルティングを行うコンサルティングファームです。担当領域は経営戦略からITソリューションの導入、業務プロセスの改善、財務や人事に関するアドバイザリーなど多岐にわたります。
<代表的なコンサルティングファーム>
・アクセンチュア
・EYストラテジー・アンド・コンサルティング
・KPMGコンサルティング
・デロイト トーマツ コンサルティング
・PwCコンサルティング
財務会計コンサルティングファーム(FAS)
財務会計コンサルティングファーム(FAS)は、企業の財務会計に関するコンサルティングや、財務会計における業務プロセスの改善提案などを行います。ビジネスのグローバル化が進む中、財務会計はどんどん複雑化しており、企業の財務担当者だけでは手に余る場面もあります。そうした中で力を発揮するのが財務会計コンサルティングファーム(FAS)です。
<代表的なコンサルティングファーム>
・GCA
・フロンティア・マネジメント
・PwCアドバイザリー
・KPMG FAS
・デロイトトーマツファイナンシャルアドバイザリー
・EYストラテジー・アンド・コンサルティング
・エスネットワークス
ITコンサルティングファーム・DXコンサルティングファーム
ITコンサルティングファームやDXコンサルティングファームは、近年、各企業が注力しているIT化やDXといったデジタル領域に関するコンサルティングを行います。今や、ITを活用しない企業は皆無といってよく、さらにDXがトレンドになっていることもあって、業界を問わず、最も需要が高まっているといえる領域です。
主にIT戦略やロードマップの策定、ITガバナンスの構築、ITを駆使した業務プロセスの改善提案などを担当します。
組織人事コンサルティングファーム
組織人事コンサルティングファームは、企業における人事領域に関するコンサルティングを行います。人事制度の構築や組織診断、タレントマネジメント、採用戦略の立案などが主な役割です。働き方改革がトレンドになっていることや、さまざまな人事系のITツールが登場している背景もあり、組織人事改革を進めている企業は増えています。そのため、コンサルタントの需要が大きくなっている領域といえます。
ここで挙げたコンサルティングファームの種類はごく一部であり、実際にはさらに細分化されています。また、複数の領域にまたがるコンサルティングファームもあります。例えば、ITはすべての領域に関わってくるため、組織人事や財務会計を担当する場合、少なからずITコンサルティングファームとしての側面も同時に求められるといった具合です。
業界や機能に特化したコンサルティングファームだけでなく、さまざまな領域のコンサルタントがチームを組んで、あらゆる課題解決に取り組む大規模なコンサルティングファームも存在します。
コンサルタントになるために必要なスキル
コンサルタントとして転職するために求められるのは、ハードスキルとソフトスキルの両面です。どちらがより重視されるのかは、年齢などによっても変わります。
続いては、コンサルタントとして転職するために求められるそれぞれのスキル内容について、具体的に解説します。
ハードスキル
ハードスキルとは、前職までに担当した業務内容や、その業務をどのように遂行したのかといった、具体的な経験や知識のことです。コンサルタントになった後は、前職までのスキルを活かしてコンサルティングを行うため、採用時には当然重要視されるスキルといえます。特に、部門横断的に会社の業務を推進したり、クライアントの業務を推進したりするなど、実行力を伴った経験は高く評価されます。
ただし、若くて経験が浅い候補者の場合、どうしても経験豊富なベテランに比べてハードスキルが見劣りしてしまうこともあります。では、若い候補者は不利になるのかというと、そうではありません。若い候補者の場合、採用における全体評価のうち、ハードスキルは3分の1程度であり、残りの3分の2は後述するソフトスキルが重視されます。
ソフトスキル
ソフトスキルとは、仕事をやり抜く力、いわゆる「ガッツ&タフ」と呼ばれるスキルです。どんな仕事でも必要なスキルではありますが、コンサルタントの場合は特に、このソフトスキルが重要となります。
なぜなら、コンサルタントの仕事である企業の課題解決には、「絶対的な正解」がないからです。同じ業種、同じ領域であってもクライアントごとに事情は異なり、その都度、正解を探っていくしかありません。
企業が抱える課題をヒアリングし、これまでに培った経験やノウハウを活用して、解決の道筋を探っていくという作業は、ある意味で終わりがないのです。そのため、「もっといい提案はないか」と突き詰めていく精神力や体力がコンサルタントには求められるのです。
特に、ハードスキルの乏しい若く経験の浅い候補者にとっては、このソフトスキルこそが転職における武器となります。
コンサルタントのやりがいとは?
コンサルタントは、ほかにはないやりがいを持てる仕事です。例えば、自分自身が携わった案件が成功し、その結果、企業が成長していく過程を見ることができるのは、コンサルタントの仕事ならではの喜びといえるでしょう。大企業がさらに業績を伸ばしたり、スタートアップが大きく飛躍したりする原動力になれたという確信は、次の仕事への自信にもつながります。
また、クライアントからの感謝の言葉も大きなやりがいだといえます。もちろん、仕事で感謝されること自体はコンサルタントに限ったことではないですが、企業の課題解決を行うという仕事の特性上、コンサルタントは特にクライアントから感謝されることが多い職業です。
そして、長期的なやりがいとして、自分自身が携わった案件の担当者が出世するという喜びもあります。コンサルタントが担当する業務改革や人事、財務といった領域は、企業の根幹をなす重要な部分であるため、その領域で活躍した担当者が高く評価され出世することは珍しくありません。出世した担当者から感謝の言葉をかけられることも多く、コンサルタントにとって大きなやりがいとなります。
コンサルタントにおける仕事の大変さ
コンサルタントは、大きなやりがいや喜びが得られる一方で、大変なことやつらいことも少なくありません。コンサルティングした結果、企業が成長したり担当者が出世したりといった大きな成果につながるということは、裏を返せばそれだけ責任重大な仕事を請け負っているともいえます。
また、コンサルティングには絶対の正解がなく、最後まで不安と戦いながら提案を行い、プロジェクトを進めることになります。
コンサルタントにとっての成果物とは、何か物を作って納品することではなく、あくまで提案書と自分自身の発言しかありません。コンサルタントの時間はすべて、クライアントのコストになっているといえます。
そのため、例えば会議に出席した際に一言も言葉を発しないようなコンサルタントは、クライアントから厳しく評価されます。なぜなら、コンサルタントが言葉を発しないその時間にも、クライアントはお金を払っているからです。会議に出席するなら、出席するだけのバリューを発揮できなければコンサルタントの価値はありません。「提案書を電子メールで見るのと何が違うのか」という、クライアントからの問いに応えられるだけの付加価値を見せなければなりません。
こうした厳しい仕事をこなすためには、強烈なプロ意識が必要です。提案して終わりではなく、常にPDCAを回しながら改善を続ける必要があります。答えがあるようでないコンサルティングという仕事は、精神的にとてもハードだといえます。
コンサルタントに向いている人の特徴
コンサルタントに必要な資質は、前述したハードスキルとソフトスキルです。加えて、成長意欲の高い人はコンサルタントに向いているといえます。コンサルタントの仕事は非常にハードですが、そうした厳しい環境に身を置くことで早く成長できるともいえます。クライアントとの仕事を通して日々学ぶことも多いですし、同僚や上司からもたくさんの知識が得られます。そのため、勉強意欲や成長意欲が高い人にとっては、コンサルタントという仕事は最適な環境であるはずです。
また、コンサルタントは専門性を高めたい人にとっても向いている仕事です。例えば、人事や財務などの分野で専門性を高めたい場合、事業会社では十分な専門性を身につけられないこともあります。
事業会社でよくあるケースとして、人事や財務、営業などをまんべんなく経験し、40代くらいになって管理職へという流れがあります。この場合、勤務している会社に関する知識は十分に身につきますが、人事や財務などの専門的なスキルについては、どうしても不足してしまいがちです。
さらには、近年需要が増しているIT系の業務についても同様です。事業会社でIT系の業務に携わる場合、外部業者のサポートを受けるケースが多く、どうしても得られる知識や技術が表面的になりがちです。
将来、人事や財務、ITなどのスペシャリストとして活躍したいのであれば、コンサルタントという仕事は良い成長の機会になるでしょう。
コンサルタント業界で働く人たちが描くキャリアイメージ
コンサルタントのキャリアは千差万別です。そのままコンサルタントとして仕事を続けることもあれば、起業独立したり、事業会社や金融機関などへ転職したりとさまざまなキャリアがあります。
例えば、戦略コンサルタントであれば事業会社の経営企画へ転職したり、ITコンサルタントであれば事業会社のIT企画に転職したりするケースが比較的多いといえます。
いずれにしても重要なのは、コンサルタントとして得た知識や経験をもとに、ネクストキャリアが決まっていくという点です。組織人事のコンサルタントをしていた人が、次のステップとして事業会社の財務会計を目指すのは大変です。組織人事コンサルタントとしての経験を活かすなら、やはりネクストキャリアも組織人事に携わるのがスムーズであるといえます。
そのため、コンサルタントになる場合は、できる限り転職前にあらかじめ、将来のキャリアイメージを固めておくことが重要です。将来やりたいことやなりたい姿から逆算して、どの領域のコンサルタントを目指すのかを考えるのが望ましいといえます。
もちろん、実際にコンサルタントになってから、将来のキャリアイメージが変わることもあるでしょう。とはいえ、何もイメージを持たないままコンサルタントになるのと、しっかりとしたキャリアイメージを持ってコンサルタントになるのとでは、方向転換をする際の決断スピードや覚悟が違ってくるはずです。